7月の10大腐敗・汚職報道
1.
1. まるで「不祥事のデパート」(警察官腐敗)
2. 平成のお家騒動(道路公団問題)
3. 家産型政治の破綻(土屋埼玉県知事問題)
4. 政界のペット(辻本元衆議院議員問題)
5. 見えない被害者(東京都水道局談合問題)
6. 精神革命が必要な不良官僚群(大証オプション不正取引問題)
7. 正義が勝たない国(社会保険庁問題)
8. 「トカゲのシャッポを切る」べき(大阪市ごみ施設汚職)
9. 役人天国日本
10.情報公開不開示
2.
1.まるで「不祥事のデパート」(警察官腐敗):
警察官の不祥事はほとんど毎日のことなので、もはや驚く人も少なく、ニュース・バリューも低いものになってしまっているが、それでもその多様さには驚かされる。
7月の日刊紙による報道からでも、「酒気帯びひき逃げ」、「痴漢」、「公然わいせつ」、「捜査情報漏洩」、「調書捏造」、「隠蔽指示」、「万引き巡査部長自殺」、「DVD万引き」、「取調べ中拳銃で死亡の疑い」、「勤務中運転練習・免許取得」、「犯罪でっち上げや着服」、「巡査長微罪でっち上げ」、「反則切符放置」、「信号機入札で加重収賄」、「児童ポルノ画像をネットで公開」、「証拠品紛失」、「拳銃暴発の発覚恐れ、虚偽報告」、「女性記者にセクハラ」、「捜査情報漏洩」、「タクシー運転手に暴行」、「通帳窃盗」、「武富士から警視庁職員にビール券」、「拘置一ヶ月余、警察留置場で男性被告が急死」、「防犯協会運営費を横領」、「大阪府警巡査のひったくり」、「警官を窃盗未遂容疑で現行犯逮捕」、「警官交通事故『起訴相当』を議決 再捜査へ」、「酒気帯び運転で停職3カ月」等多彩極まる。
7月16日に警察庁が「刷新会議」元メンバーに行った改革状況報告でも、懲戒処分者は全国の警察で昨年569人に上り、一昨年に比べて83人も増えている(読売新聞:7.16)。
全国警察の検挙率が20%を切り、今やわが国の安全神話は崩壊してしまった。新宿から始まった防犯カメラ設置が全国の商店街に急速に普及していたり、捜査打ち切り後に不明女性の妹が遺体を発見する(佐賀新聞:7.12)といったように、市民が自己防衛に乗り出す動きも活発化している。
とはいえ法治国家での市民の自衛策には限度があり、警察への依存は不可欠である。にもかかわらず、全国に及ぶかくも多彩な犯罪が、取り締まるべき組織から発生し、その有効な対策がなんらなされないという状況には恐るべきものがある。
「魚は頭から腐る」というが、末端警察官の不祥事の増大は、警察組織全体の腐敗構造と直結しているのだろう。組織の根本からの改革がない限りこの国の治安は悪化の度合いを加速していく。
2.平成のお家騒動(道路公団問題):
腐敗や汚職は複合汚染の形をとるが、「道路公団問題」もその例に漏れない。
特に、道路公団を巡る7月の報道では、幹部による月刊誌での内部告発、債務超過とそうでない2種類の財務諸表、「酒食会議」なる官政・官官接待、更には接待偽装による経費流用、監査法人による財務諸表監査拒否等々組織の体をなしていないような事態が相次いで報道された。
加えて道路4公団からの天下り社長の退陣が23人にとどまり、74人が居座りを続けたり、道路公団ファミリー企業が発注先上位6割占める異常さも判明した。更には組合形式による高速料金別納問題まで噴出し、武士の商法に付け入られる愚かさも露呈してしまった。
民営化委員会や各紙の社説は公団総裁の更迭を主張する(日経:7.13、産経:7.15、朝日:7.21、読売:7.26)が、当の総裁は衆議院予算委員会での答弁も切り抜け、意気軒昂として内部告発者や掲載誌を提訴している。
民主革命を未完に終えた我が国は、至る所に徳川封建体制を残している。悪家老や忠臣、バカ将軍に黒幕風の幕閣を想起させるような人物が次々登場するこの事件には、時代劇のお家騒動を連想させるものがある。
伊達騒動の原田甲斐は逆臣であったのかもしれないが、山本周五郎は「樅の木は残った」で通説を否定している。歴史は真実を明らかにしたりはしない。10年もすればこのような事件は登場人物も含め、忘れ去られてしまう。
国民は文士劇もどきのドタバタなどは見たいわけではなく、これ以上の血税の浪費を抑える改革をこそ望んでいる。
「道路公団問題」は元々、財政負担に耐えられなくなった政府が民営化を打ち出したことにあり、必ずしも腐敗・汚職に直結していたわけではない。実際「抵抗勢力」に抗してマスコミ受けする民営化委員も選出し、道路公団民営化は小泉首相の目玉商品のひとつであった。
勿論、土建国家日本を担う一大特殊法人として、道路族議員や天下り官僚の牙城であったので、叩けば百鬼が飛び出すことは十分想定されたが、それにしても政治的英断を要する一大経済問題が今や社会部ネタに化してしまった。
この茶番劇は来月には、大団円を迎えるのだろうか?
3.家産型政治の破綻(土屋埼玉県知事問題):
6月に発覚したダスキン元会長の特別背任問題は、突然埼玉県に飛び火し、今月は土屋知事とその長女を巡って、ウラガネ、口利き、政治資金規制法違反や不正処理問題という風に、「政治と金」一色に変貌した。
当選を重ねると政治家の「地盤・看板・カバン」は家産となり、ファミリーや取り巻きが利権集団を形成するのは古往今来、洋の東西を問わず、それが腐敗・汚職の根源となる。
競争とスピードが激しい企業経営の世界では家産制は最早絶滅に近いが、政界と芸能界ではますます繁栄を誇っている。
土屋氏は大正製薬の縁戚に連なり、その資金力を背景に参議院議長まで勤め上げた人物といわれている。埼玉県知事に転進し、全国知事会会長を勤める実力者が、晩節を汚したのは哀れでさえあるが、国家が変革されるためにはこのような家産型政治家を消滅させなければならない。
4.政界のペット(辻本元衆議院議員問題):
7月後半に突然解散風が吹き始めたと思ったら、18日夜に辻本元衆議院議員他3名が「名義貸し」による秘書給与詐取の疑いで逮捕された。
朝日は「土井氏は名を惜しめ」という7月23日の社説で、国民の政治不信を断つためにも自らを律することを求めたが、当の土井氏は涙ながらに弁明しながらも続投を宣した。
旧社会党時代には最大野党という存在感を示した時期も長くあったが、時代がイデオロギーを置き去りにし、国際連帯でも裏切られ、「自社さ」連立内閣時代には党是をほとんど塗り替えてしまう変節の果てに、現在の社民党がある。
政治・経済・社会を問わず、弱者の存在は強者を安心させ、システムの安定化に寄与する。チャレンジできる恐れのまずない社民党は政界のペットというにふさわしい。一時は大向こうを唸らせた辻本氏への意趣返しという形で、政治家と金という腐敗の根本問題には迫ることなく、一件落着となるのだろうか?
5.見えない被害者(東京都水道局談合問題):
たまたま東京都の水道メーター入札で業界ぐるみ(しかも97年に次ぎ、2度目)の談合が摘発され、営業担当の責任者が逮捕される事態となったが、グローバル化している経済の中で、競争力を高めるのではなく、「排除の論理」で戦うという発想は、現場レベルのものである筈はなく、当然その他の入札でも同じ事態が想定される。今後、検察がトップの責任とその他の案件をどこまで追求するか、注視していきたい。
とはいえ、問題の本質はそこにはない。なぜなら、談合という経済現象はわが国の封建制度の残滓の一つだからである。
フリー、フェア、顧客志向が資本主義の競争原理であるが、競争を排除し、高価格を維持する談合は、よそ者を排除し、ムラ社会の秩序を優先する封建遺制である。
本件の談合では、中国製品の脅威という問題が指摘され、それなりに納得してしまう外国嫌いの人々もいるようだが、高い商品を買わされる消費者兼納税者たる市民の声はどこにも届かない。
東京都が談合にどの程度関与していたかは報道されていないが、仮に全く関与していなくとも都民に対する責任は重く、説明責任もあることを忘れてはならないだろう。
6.精神革命が必要な官僚組織(大証オプション不正取引問題):
6月からこのシリーズを始めていれば、10大腐敗・汚職報道のトップになっていただろう。それほど、この問題は腐敗の複合要因を持っている。
元大蔵OBで、大証元副理事長は25日証取法違反で在宅起訴されたが、元々は東証が約束を反故にした事から大証の存続に危機感を持ち、個別株オプションという新商品に活路を開くべく、子会社経由で仮装売買を行ったとされる。
大証に無断で設立した証券会社には旧大蔵省課長補佐の指導も得ており、退職金の未払いについては旧大蔵省の意向を受けた「とりなし」の書状が元大蔵次官から出ていたことも発覚した。大蔵一家の親密振りが明かされた事態である。又、捜査直前に証拠隠蔽を図った疑いも強い。
市場開設者で自主規制機関である証券取引所の幹部が相場操縦を図るという前代未聞の事態は私利を得るためではなかったという点でもユニークである。恐らく官僚という「武士の末裔」が持つ独善的な使命感と驕りがなせる行為であったのだろう。
わが国が民主資本主義の国家となるには、制度改革の前に国民一人一人の精神の革命が必要なように思われる。勿論、その筆頭は役人であるが・・・・
7.正義が勝たない国(社会保険庁問題):
経済が順調で、国民に活力がある時代には、国家は眠っていたほうがよい。少々の収奪や失政も元々が暴力装置である以上、我慢の範囲にある。
しかし、経済が苦境にあり、失業率が5%を超え、国民が将来に不安を抱くとき、民主国家であれば国民のために行動しなければならない。
社会保険庁というのは、取り分け国民がいざという時のために身銭を切って支払ってきた保険料を管理する組織であるから、設立来初めて活躍すべき時機が到来したのである。
にもかかわらず、この組織を巡って今月は2件の不祥事が発覚した。
ひとつは、コンピュータの手続きミスから年金の未払いと過払いが発生したことが発覚したことである。
もうひとつは、社会保険庁の職員が健保組合の幹部に天下りした幹部から頻繁に過剰接待を受けていた事件である。
この事件は、内部告発によって発覚したが、所管官庁たる厚生労働省は7ヶ月も放置し、3通目で始めて調査を開始した。
東京社会保険事務局の保険部長は、接待を繰り返した専務理事と「喧嘩両成敗」だとして告発した常務理事に報復人事を示唆したとされる。常務理事はその後実際に退職させられたが、理事長は個人の問題として組織や自らの責任を回避した。
国民年金の未納が4割を超え、(多分役人を除く)国民全てが将来の年金に不安を持っているときに、言い訳の仕様もない不祥事にもムラ社会の論理を振り回すだけで、透明性も説明責任も果たさない組織は国家を死に至らせることになる。
8.「トカゲのシャッポを切る」べし(大阪市ごみ施設汚職):
公正取引委員会は強制調査権限や課徴金の大幅引き上げを盛り込んだ独禁法の改正を2004年に目指している(日経:7.22)が、地方政治家や役人のイジマシイ収賄事件は相変わらず後を絶たない。
大阪市のごみ施設汚職事件で逮捕された同市環境事業局処理技術担当部長は、当初定年退職間近につけ入られたものと思われたが、その後新たな容疑が相次ぎ、収賄が常習化していたことが次々に明るみになった。
一担当部長がそのような権限を発揮できるとすれば、組織の機能不全であり、そのような権限はもてないとすれば「魚は頭から腐る」ように組織全体が腐敗していることになる。
昨今、雪印や日本ハムの例で明らかなように企業経営の現場ではトップが知らなくとも、「トカゲのシャッポ切り」(久保利英明)が当たり前になっている。
贈収賄事件が絶えないのは、生き残りのために必死の業者からの攻勢もあるが、シャッポが責任を取らない役所の問題が大きい。
首長の他人事のような謝罪声明やおざなりの処分ではなく、厳罰を持って一罰百戒としなければ、悪癖は改まらず、いずれ市民の反乱にあう。
9.役人天国日本:
「役人栄えて、国滅びる」という言葉が冗談に聞こえなくなるほど、官僚組織はこの国の経済悪化を加速させている。
国債の債務不履行や預金封鎖もあちらこちらで囁かれ始め、富裕層の資本逃避を誘うプライベート・バンクの活動も活発化している。
年収3百万円を生き抜くといった類の倹約本がベストセラーとなる中で、今月も役人の優雅な生活やお粗末な仕事振りが報道されている。
道路公団からの天下り社長74人が居座り(朝日:7.1)を続けたり、
国の組織や公益法人24団体で退職金1億円超が判明(読売:7.5)したり、福岡県職員OBが天下り先での給与カット要請を拒否(毎日:7.8)したり、省庁は腰掛異動で手当てを水増し(読売:7.20)したり、職員飲食のために4億円の所得隠しを行う簡保加入者協会(朝日:7.17)があったり、その処遇のよさは際立っている。
一方で、地方単独事業では年5兆円の過剰見積もりを行って(朝日:7.10)いたり、世田谷区では税申告書を紛失し(佐賀:7.2)、国税職員は納税記録を改ざんし(日経:7.6)、社会保険庁は年金支給ミスで3万4千人に「わび状」(読売:7・15)を出さざるを得なくなり、札幌市営地下鉄は特別監査まで事故を報告せず(佐賀:7.15)、福岡県の(総務省から出向中の)防災課長は豪雨災害の当日登庁せず(毎日:7.23)、宮城県知事らは震災時にも南米訪問を続行(朝日:7.30、)といったような組織の退廃振りも顕著となっている。
小泉首相は特殊法人推進本部参与会議が指摘した経費の1−2割削減を賛同しながら、野党議員の役人給与の削減提案には反対した。
所詮役人に操られる総理であれば、この国の改革はないと思わざるを得ない。
10.何に恐れるべきか?(情報公開不開示):
毎日新聞(7・24)によれば、情報公開法施行から2年間に、国の行政機関が「不開示情報に該当する」と決定して不服申し立てを受け、内閣府の情報公開審査会が答申した465件のうち、約6割の274件について行政機関の判断を「妥当でない」「一部妥当でない」としていたことが分かった。一方、答申を受けた行政機関が、改めて開示決定などを行うのにかかった期間も、長期化が目立った。
どのような組織でも秘密のベールに包まれていれば、大変居心地の良いものである。それにもかかわらず、ディスクロージャーを行うのは、組織に恐れるものがあるからである。権限を与えられながら責任を問われない官僚組織は、腐敗するしかない。
私企業では恐れるものは自明である。小泉改革が真の改革を目指すものであれば、何を改革すべきかも自明であろう。
(K.Y)
2003.8.3