コラプション・ファイターのための新刊書案内

「ブラック・ジャックはどこにいる?」
「―ここまで明かす医療の真実と名医の条件
」
南淵明宏著 PHP研究所刊 2003年07月
10年以上にわたる経済失政の結果、この国の社会システムは全体として緩慢な崩壊に向かっている。
過去50年以上、その存在理由を問い直すことなく、ひたすら既得権の拡大にまい進してきたすべての組織が解体へと向かっているが、それは自由競争という経済原則のウェイトが高い部門から徐々に始まっている。
医者と言う特殊利権を享受してきた集団も、民間に近いところほど危機にさらされ、破綻が日常化しているが、公的な部門にもその影響が現れてきている。
氷山の一角に過ぎないとはいえ、頻発する医療過誤問題や、各大学医学部で発覚した医師の名義貸し、委託費の流用などがその端的な現れである。
本書は、日本の医者と言う特殊人種が如何に粗製濫造されるかを、きわめて平易な文章で説明している。
わずか2時間足らずで、この国の医療現場の惨状が理解できるというのも、驚くべきことである。
著者は、奈良県立医科大学という一流とは言いがたい大学出身ということと、生来の反骨精神から、既存の医者部落の落ちこぼれとなり、オーストラリアやシンガポールで心臓外科医としての修行を積んだと述べている。
この結果、世界に通用するプロとしての自信とアウトローとしての立場から、この国の医療・医師制度を厳しく批判しており、その口調は歯切れよく、かつ分かりやすい。
不幸なことにわが民族は長い歴史を通して、権威に弱いという体質に染め上げられてきたが、もはや権威に頼る時代は終わり、自らが真贋の判定を行わなければならない。医療の世界がその最初のひとつである。
(K.Y)
2003.9.15