コラプション・ファイターのための新刊書案内
「ひとりひとりが築く新しい社会システム」
加藤秀樹編著 ウェッジ選書13 2003年3月
本書の背後には、文明論がある。しかも従来の歴史地理的な文明論ではなく、ビッグバンに始まる宇宙的スケールの壮大な文明論である。
著者たちは「地球学」を提唱する。「地球学は、人類や地球の歴史の流れの中で、私たちの社会の現在、そして将来を考えようという試みだ」という。
本書は、このような「地球学」的視座から、当代一流の論客が3部構成でそれぞれの分野での持論を展開する。
第1部では、民間シンクタンク「構想日本」代表で、本書の編者でもある加藤秀樹氏が、現在日本の政治・経済・社会の問題点を単純明快な図式で説明する。
著者は、「公」と「私」という社会活動の領域と、「官」と「私」という社会活動の行動主体を取り上げ、近代日本がひたすら「公」領域の「官」へのアウトソーシングを進め、その結果「私」的分野ですら深刻な空洞化が進んでしまったと指摘する。
著者は丁寧な暮らしを始め、草の根からの構造改革を進め、サステイナブルな知恵の発掘を推奨する。又、それが「地球学」の目的だという。
第2部は、「地球学」の提唱者である松井孝典東京大学教授及び櫻井よしこ、加藤秀樹の3氏による鼎談である。
まず、松井氏が「箱モデル」で「地球というシステムの中で現在が『人間圏』という箱の時代だと定義し、「地球システムの中で人間圏は安定か、又安定に存続するかどうか」という本質的な問題をめぐって鼎談は展開されていく。
第3部は、3名の碩学による日本の将来への示唆である。
まず、阿川尚之・在米日本大使館公使は米国の「官」と「民」の役割分担を分析し、「『官』にしかできないことだけを、『官』にまかせる」という建国以来の伝統が守られていることを指摘し、わが国にとって米国型が参考になるだろうと主張する。
次に、猪木武徳・国際日本文化研究センター教授は、現在の産業社会は公共の利益を考えるグループが存在するか、高度に専門化された人材を有しているか、という2つの問題に直面していると指摘し、わが国の立ち遅れを憂う。
最後に、岩井克人・東京大学経済学部教授はアダム・スミスに始まる経済学が「倫理」を放棄した結果、地球温暖化といった問題を解決できなくなり、再び「倫理」に回帰しなければならなくなっていると指摘する。
「地球学」が、初めて実践される「文明論」となることを期待したい。
(K.Y)