コラプション・ファイターのための新刊書案内
「報道危機
―リ・ジャーナリズム論」
徳山喜雄著 集英社新書 0197 2003年6月
英国の名門経済誌「エコノミスト」はビル・エモット編集長名で、イタリアのベルルスコーニ首相宛ての公開質問状を8月2日号に掲載し、首相が抱える数々の疑惑への回答を要求している。その政治的背景は別にして、イタリアのメディアが沈黙を強いられているときに、英国のメディアが挑戦を仕掛ける意味には大きなものがある。
さてそこでわが国のメディアであるが、ワンマン会長の醜聞を巡る実名での内部告発にも退任という形で応えるのみでまったく説明責任を果たさない一流経済紙は勿論、沈黙を守る同業他紙にも、挑戦を忘れたメディアの危うい未来が窺える。
本書は、このようなわが国のマス・メディアの現状を、第1章:放送メディア、第2章:活字メディアに分けて、各々の持つ内外の深刻な問題点を具体的に解き明かし、第3章では新しい潮流としてのインターネット・メディアの急激な隆盛と、その裏面にある脆弱さと利用され易さを指摘する。最終章では明日のあるべきジャーナリズムとして、従来のOTJ式記者教育を批判し、欧米のジャーナリスト教育の現状やわが国での大学との教育連携に触れるが、明るい未来像を提示しているわけではない。それほど、展望は暗いのであろう。
米国のジャーナリズムも、取り分け「9.11事件」を徹底的に利用するブッシュ政権の下で、批判を封じ込められたり、自主規制を強化しており、既成ジャーナリズムの閉塞状況が露呈されている。
「無冠の帝王」という初心に帰り、常にチャレンジするジャーナリズムの勃興を期待して止まない。
(K.Y)
2003.8.12