違法な経営はおやめなさい
 / 久保利英明/著 
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「違法な経営はおやめなさい」
久保利 英明
東洋経済新報社刊 2003年3月

 

 企業不祥事は昔から洋の東西を問わず存在しており、会社を破綻させ、従業員や株主、債権者、地域社会その他のステークホルダーに多大の犠牲を強いるケースも枚挙にいとまない。

 だが、企業不祥事の今日的問題は、経済規模が拡大し続け、グローバル化した結果、そのスケールも超弩級になってしまったことにある(小粒の不祥事も依然数多あるが)。

 

 昨今企業を取り巻く経済・社会環境は大きく変貌を遂げた。世界的にもそうであるし、バブル崩壊後10数年を経て、デフレと不況の先が見えないわが国では取り分けそうである。

その結果、不祥事も複雑・多岐なものとなり、著者が指摘するように「遵法と利益を天秤にかけ、どちらが大切かを考えるような時代は終わ」り、コンプライアンス(法令遵守)や企業倫理、インテグリティ(誠実性)と言った言葉が経営の流行語になりだした。

 

著者は長年にわたり弁護士として企業犯罪の現場で闘ってきた実務家であり、本書には企業防衛や経営者のリスク管理のエッセンスが詰まっている。

 著者は先ず、近年企業社会には三つの大きな変化があったと指摘する。

ひとつは、「トカゲのシッポ切り」が「トカゲのシャッポ切り」になったこと、

ふたつには、持株会社化によって企業トップが全グループを直接的には完全に掌握できなくなったこと、

最後に、流通や行政、証券マーケットからも手厳しい制裁を受けるようになったこと、である。

 その現象として、トップからヒラの犯罪へ、不祥事発見のルートが捜査から内部告発へ、倒産をも引き起こす不祥事の深刻化、トップの劣化、情報漏洩を加速するIT、といった変化を挙げ、経営のスピードや会社全体の経営資源の配分決定ができなくなったことも加わり、「トップの役割も、社長独裁からCEOのモニターリングを行う取締役会へと変化せざるを得ない」と指摘する。

その結果、経営者は流動化し、プロ化していく。そして、プロの経営者の責任とは、「末端に至るまで違法行為を最大限抑止するような内部統制システムを構築することにある」と断言する。

読者は、そのようなあるべき内部統制組織の構築を伝授される他、不祥事多発を受けて昨年急遽立法化された米国サーベインス・オックスレイ(企業改革)法の解説や、わが国での多様な不祥事の実例等々盛り沢山の内容を読み進むことが出来る。

 

本書は平易な文章で書かれた大変親切な本であり、現代の厳しい経済環境の中で会社を守っていかなければならない多忙な経営者が、新幹線や飛行機の中でも通読できる実利の書である。

 

                   K.Y)

   (2003.8.5)