コラプション・ファイターのための新刊書案内

 

「会社はこれからどうなるのか」

岩井克人著 平凡社刊 2,0032

   

 

 企業経営論やコーポレート・ガバナンスに関する書籍は、学者が書く高邁で難解なものか、実務家や会計士、弁護士の書く実務的で無味乾燥なものがほとんどである。

そのような佶屈聱牙な書物と異なり、本書は表題からしてとっつきやすい。

本書は、会社と言う組織が歴史的に何故現在のようなものに至ったのか、これからどこへ向かっているのかを極めて分かりやすい言葉で述べている。

 著者は、わが国の「90年代の政府や日銀の混乱ぶりは(そしてわたしたち経済学者の混迷ぶりも)、世界の笑いものであった」と率直に認め、「一度も会社で働いたことがない純粋培養の学者」として、ポスト産業資本主義という時代に「会社はどうなるのか」と言う問題に答えようとしている。

そして、会社とは(少なくとも一部は)従業員のものであると言う80年代に有力であった日本的な「会社共同体」論も、会社とは株主のものでしかないとするアメリカ的な「株主主権」論も決してグローバル標準になりえないことを解き明かそうとする。

 その根拠は、第一に、株主主権論が会社法理論上誤りであるからだ、と言う。何故なら、歴史的な由来から考えれば、「社会の公器」たる会社の経営者は、単なる株主の代理人ではなく、忠実義務と注意義務を有する会社の信任受託者であり、第二に、おカネ(資金)の重要性がますます失われていくからだ、とする。

 著者は、産業資本主義からポスト産業資本主義への移行の過程で、有形資産から知識資産へ企業価値が移っていることを、マイクロソフトを例に説明する。又、世界的な広告宣伝会社であるサーチ・アンド・サーチ社の例で、如何に人的資源が重要かも例示している。 

確かに企業価値とは、費用の繰り延べに過ぎない有形資産ではなく、人や組織が生み出す将来収益の現在価値であるから、この指摘は正しいが、現実のわが国の金融危機を見ているとカネの重要性がますます高まっているとしか思えない。

銀行の貸し渋りや貸し剥がしのために、倒産に追いやられる企業が後を絶たず、銀行自身が資本不足の危機にあり、国家も負債の重圧から破綻の淵にあるときに、どのくらいの企業がポスト産業主義を化体しているだろうか?

 著者は又、「21世紀と言う世紀とは、NPOの活動、とくにNPO法人の活動がますます活発になっていく世紀」という。法人の起源は、都市や僧院や大学といった現在の言葉で言えばNPOに由来するので、会社に限らず組織というものが先祖帰りしていくことも示そうとしている。

 

  (Y.K)