コラプション・ファイターのための新刊書案内
「霞ヶ関の掟 官僚の舞台裏
―役所の常識は世間の非常識 キャリア官僚が明かすお役所の驚くべき実態」
林 雄介著 日本文芸社刊 2003年5月
著者は国家公務員1種採用試験に合格し、いわゆるキャリア官僚となったが、大臣たちのセクハラ行為に我慢できず、民主党の衆議院議員公募候補に合格し、25歳で中途退職した人物である。
本書は、著者が友人に送ったメールに加筆したものだそうで、官僚機構という大ピラミッド構造の最下層に近いところに数年棲息した人間の見聞録ということになる。
著者は、官僚の仕事は3K(きつい、きたない、かっこ悪い)だという。確かに、一般の日本人の年間労働時間が1800時間のときに、残業が2千時間を越える勤務環境にいれば、家庭問題も起こり、社会からも遊離する。その結果、国益を忘れ、省益や局益、課益に走る蛸壺集団が群生し、役人はひたすら孤立した蛸壺の増殖に走る。だから著者は、「霞ヶ関は任侠道の義理と人情の世界」になるのだという。
そんな霞ヶ関に、「政治家は無理とわがままを押しつけ、マスコミは夜遅くまで省内を徘徊してただ酒を飲んで、官僚の悪口を書くが、最も悪いのは政治家を利用しようとする質が悪い選挙民」だというが、政・官・業の「鉄の癒着」構造の中では、誰が一番悪いという訳のものでもなかろう。
著者によれば、役所の仕事は20%の役人が80%の仕事をこなしているそうだ。これは、20%の要因で80%の結果が説明できるというパレートの法則−「80:20ルール」とも言うが−そのものである。だから、「役人に仕事をさせるのであれば、80%の人間をリストラすればよい」という。
著者は公務員はサービス業だというが、サービス精神のない大量の役人を天下りでなくとも、民間部門に押し付けるような「リストラ」でない、本当のリストラが出来るのであれば、この国の復活の要因になるかもしれない(誰ができるというのだろうか?)。
只、官僚問題の本質はそんなところにはない。問題は、優秀な役人が必死で働けば働くほど、国が悪くなり、社会が悪くなるというパラドックスにある。 この国は、官僚組織が自己増殖の果てに寄主を食い尽くすガン細胞になってしまっているからである。
著者の「霞ヶ関劇場」は悲劇というべきか、喜劇というべきか?
(K.Y)