コラプション・ファイターのための新刊書案内
「メディア・コントロール
正義なき民主主義」
N.チョムスキー著 集英社新書 2003年4月
著名な経済学者であるポール・クルーグマンは「ニューヨーク・タイムス」のコラムニストとして、毎回痛烈なブッシュ政権批判を繰り返している。
それでもこの硬骨の批判者の前では、色あせて見えてしまう。
言語学に革命をもたらしたこの碩学は、ベトナム戦争以来過激な政権批判を繰り返す活動家の一面も併せ持つ。
本書は、唯一の覇権国家として、野心を剥き出しにし始めた最近の米国政権へのチョムスキーの見解を知ると同時に、読み易い構成ともなっているので、「異分子チョムスキー」入門としても最適のものといえる。
本書は、3部で構成されている。
第1部「メディア・コントロール」では、民主主義社会には対立した2種類の概念があるとチョムスキーはいう。ひとつは、一般の人々が情報にアクセスでき、決定に参画できる社会、もうひとつは情報へのアクセスが厳重に管理され、自らの問題に関われない社会であり、驚くべきことに後者が優勢だという。
「メディア・コントロール」は、後者型の民主主義社会を維持するために、為政者がどのような操作方法を編み出し、メディアは如何に利用されてきたかを史実を基に詳述している。
第2部の「火星から来たジャーナリスト」では、火星人のジャーナリストを登場させることで、自らのテロ行為については国民の目をふさぎ、他者のテロ行為のみを非難し、攻勢を加える覇者の行動を列挙し、それを報道しない正統派メディアを皮肉っている。
第3部は作家辺見庸のインタビューである。75歳の硬骨漢の迫力に「当惑」する辺見氏の前で、自らの大学で行われたチョムスキー批判集会や自らの書籍を抹殺した出版社にも動ぜず、さらには「誹謗され、断罪され、ひょっとして脅迫状の一通も受け取るかもしれない。しかし、だから何だというんでしょう。なぜそんなことをわざわざ書き立てるのか、この国はきわめて自由な国です。政府には言論を統制するだけの力はない。」と言い切る。
ここには、はるかに悲惨な状況下にある活動家への連帯と、米国民主主義への信頼がある。
チョムスキーは又、インタビューの中で中央アジアではグレート・ゲームが再現すると予言し、東チモールに関連しては、最悪の圧制の時代にもインドネシアを支援してきたのはアメリカ以上に日本だと断罪している。
日本についても相当の見識をもっていると思われるので、是非チョムスキーの日本論を聞きたいものだ。
(K.Y)