コラプション・ファイターのための新刊書案内
「日本警察崩壊」
小林道雄著 講談社刊 2003年5月
「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対的に腐敗する」というが、この言葉はわが国の官僚組織のように透明性と説明責任を無視し続けてきた組織に取り分け良く当てはまる。特に、腐敗・汚職との闘いでは、メディアとともに、法執行部門の実効性が重要であるが、わが国では司法・検察・警察の組織腐敗に関する報道が近年顕著に増加している。
なかでも、警察組織の末端部門での不祥事はほとんど連日のように報道されているが、本書も現場警察官による最近の犯罪の列挙から始まり、その背後にある警察組織の構造的腐敗に迫っていく。
本書は表題からしてコラプション・ファイターを憂慮せしめるに十分なものであるが、その内容は更に恐るべきものである。
その筆法は鋭く、腐敗の指摘は多岐にわたるが、5章からなる本書の要点をまとめれば次のようになる。
1.「初動捜査」では、第一線警察官の「捜査しない」実態を明らかにした上で、戦前の内務省直系の子孫というエリート意識から、少数のキャリア官僚が中央集権化を推し進めた果てに、国民を置き去りにし、現場の荒廃を招いた現状があると指摘する。
2.「暴力団対策法」では、ヤクザをイタリアン・マフィアと同一視した中央キャリア官僚がヤクザ対策に失敗したことを実証する。
3.「復活された監視」では、失態すら自らの利権拡大に利用する「焼け太り」体質と、市民への監視を強化して行く実態を暴く。
4.「検挙率の低下」では、かっての高い検挙率がマヤカシであった実態を明らかにする一方、警察組織内での上昇志向と事なかれ主義が今後も検挙率の低下をもたらすと予言する。
5.最後に結論として、敗戦後の占領軍総司令部内で議論され、敗れ去った民生局の「自治警察の回復」に期待するが、一方でキャリア制度の桎梏の深刻さを改めて警告する。
著者は雑誌記者の経験を持つノンフィクション作家である。欧米では、”investigative
journalism(調査報道)”という分野があり、腐敗摘発報道を果敢に行っているが、わが国のサラリーマン化した記者や、内部告発にまっとうに対応できない経営者を有する大手マスコミには望むべくもない。したがって、著者のようなノンフィクション作家への期待は大きなものがある。
(K.Y)
2003.8.5