日本企業のガバナンス改革 なぜ株主重視の経営が実現しないのか
 / 大村敬一/著 増子信/著 
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「日本企業のガバナンス改革」

 「――なぜ株主重視の経営が実現しないのか」

大村敬一・増子信著 日本経済新聞社刊 20036

 

 この数年、期せずして日米の不良経営者による大企業の破綻や不祥事が相次いだ(米国の場合は強欲な経営者による不正会計が主であり、わが国の場合は劣悪な経営者による経営の失敗が多いという違いはあるが・・・・)。

 この結果、企業経営の規律はどうなっているのかということになり、制度改正に加え、コーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令順守)、内部統制、更には企業倫理をめぐる議論が百花繚乱という状況になった。

弁護士、会計士、コンサルタントといったビジネスのネタにしようとする連中以外にも、経済団体や学者も入り乱れて参戦している。学者の中には、法学者や経営学者は勿論、実践倫理と称して哲学者までもが、利益追求一筋でのし上がってきた経営者たちに倫理や規律を教示しようとしている。

 

 そのような突如賑々しくなった分野で、本書は学者の書いたものとしては次の3点でユニークなものと言える。

まず、「あるべきコーポレートガバナンス論」と言う抽象的な議論ではなく、「コーポレートシステム」という言葉を用い、コーポレートガバナンスは企業のおかれている状況や歴史によって異なるという実際的なアプローチをとっていること。

第二に、ファイナンスからのアプローチをとっていること。著者たちは、個々の企業の「コーポレートシステム」の下で、「コーポレートファイナンス」の有り様によって「コーポレートガバナンス」が変わると指摘する。

第三に、第二点を実証するために、アンケートに基づく統計分析を駆使していること、である。

尤も,統計の利用については、次のような有名なジョークがある。「嘘には3種類ある。ひとつは普通の嘘、もうひとつは真っ赤な嘘、最後に統計の嘘である。」

勿論、著者たちが統計を使って嘘を述べているということを言いたいのではない。むしろ、アンケート調査という主観性の強いデータを丹念に分析して、真実を導こうとする努力を評価するものである(だからこそ、この種のアンケートを忌避する傾向の強い企業や基金から驚異的な比率で回収ができているのだろう)。

 

そのような努力にもかかわらず、分析の結果は一般の常識を超える結論を導き出せるまでには至っていない。それは恐らく、数多の不祥事や破綻を経験し、苦難の10年を経ても、日本の企業や機関投資家は徐々にしか変われないことを示しているのであろう。

 

                 (K.Y)

  2003.8.5