コラプション・ファイターのための新刊書案内
「世界の汚職 日本の汚職」
石井陽一著 平凡社新書 169 2003年1月
腐敗・汚職と闘うトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)という国際NGOについては、年一回公表する汚職・腐敗指数(CPI)や贈賄指数(BPI)がメディアに取り上げられる程度で、わが国での知名度は極端に低いのだろう。
本書は、そのTIの活動を報告した日本では恐らく唯一の書籍といえる。
連日のマスコミ報道を見る限り、汚職大国といって過言でないこの国で、腐敗反対の活動が乏しいのは市民運動の弱さなのか、腐敗が余りに深く社会システムに組み込まれているからなのか、それとも為政者の隠蔽や目くらましが奏効しているからなのだろうか?
本書は、国家の成立と共に古い「病」である腐敗・汚職について、(1)各国のランキング付け、(2)組織の末端での腐敗・汚職、(3)地下経済と汚職、(4)権力者の汚職、(5)政府開発金融(ODA)と汚職、(6)クリーン国家の実情といったように分析を加えた上で、(7)わが国での汚職根絶の提言、という構成になっている。
わが国のみならず、世界各国での主要な汚職事例を挙げ、その社会的背景にも触れているので、「腐敗学」入門として最適な書籍といえる。
又、ペルー政府から」の召還要請で話題を呼んでいるフジモリ問題に関連してその黒幕であったモンテシーノスと亡命中の元大統領アラン・ガルシアの裏交渉や、金大中事件の真相等内幕話も数多くあり、平易な読み物となっている。
著者は、最終章でわが国の汚職根絶のために「選挙コストの引き下げ」、「政と官の透明化」、「民営化は慎重に」、「官庁会計の革新」、「企業監査の革新」、「インテグリティ・パクトの応用」、「大学入試と医療の透明化」、内部告発制度の導入」、メディア・オンブズマン制の導入」を具体的に提言している。これでわが国の腐敗問題を網羅しているとは思わないが、いずれも重要な指摘ではある。
問題は、市民社会が弱く、このような提言を巧みに取り込み、換骨奪胎してしまう政・官の病理的組織に如何にメスを入れていくかであろう。
(K.Y)