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コラプション・ファイターのための新刊書案内
「第15回企業白書
」
『市場の進化』と社会的責任経営
―― 企業の信頼構築と持続的な価値創造に向けて ――
社団法人経済同友会著 2003年3月26日発表
まるでバイブルを読むような気がする。「文質彬彬」という言葉があるが、まず、文章の品性に驚かされる。昨今、猥雑な日本語の氾濫の中で、このような格調の高い書籍に会うことは稀である。次に、その内容は21世紀の経営者に理念と志を与える福音に満ちている。
経済同友会は永年にわたり、企業の使命とは何かを問い続けてきた。2000年12月の「第4回企業白書」では、企業には経済的価値のほかに、社会的価値、人間的価値を創出する責任があると主張した「21世紀宣言」を発表している。本書はこれに続くものであるが、この間先送りを繰り返し、出口が見えないわが国は「日本的経営」なるものの変革を求めて試行錯誤してきた。90年代の成功を背景にした米国流の株主至上主義を模倣する動きも目立ったが、エンロンの破綻を機にその熱も冷めてしまった。
そこで、同友会は欧州に目を向ける。欧州では、企業は社会的責任(Corporate Social
Responsibility:CSR)を果たさなければ、経済的成功は持続しないと考えていることを知る。又、企業の社会的責任とは、受身のものではなく、まして慈善事業でもなく、企業の存続を賭けたリスク管理とそれ以上に将来のビジネス・チャンス(欧州では、「ビジネス・ケース」と呼ぶそうであるが)と捉えていることも見出す。
同友会の新代表幹事が、企業の長期的利益ではなく、継続的利益が重要と発言しているのは、ロイヤル・ダッチ・シェル社の会長ムーディー・スチュアートの「持続的発展こそが、企業の成功と社会の繁栄の基盤を築くものである」という発言と軌を一にしている。
本書はまず、「市場の進化」を指摘する。主権が消費者に移り、企業の社会的責任を重視する機関投資家(Socially
Responsible Investors:SRI)が急増し,
効率化するサプライ・チェーン市場に勝ち残り、変貌する労働者市場で優秀な人材を引きつけなければ、グローバル化した経済では生き延びれないという「市場の進化」の時代には、企業価値は経済性のみならず、社会性、人間性を総合的に問われるという。そして「市場」、「環境」、「人間」、「社会」というさまざまなステーク・ホールダ―の為に、コーポレート・ガバナンスを整え、実践していくには、社会的責任が必須と説く伝道の書である。その点で、この提言は企業にもならず、あらゆる組織に当てはめることが出来る。特にわが国では、最も透明性を欠く行政組織にこそ伝道すべきものであろう。
又、ステーク・ホールダーとは何か、その優先順位をどうするか、それを踏まえた企業のガバナンスをどう定めるかといったことは、神学論争に陥るものであり、福音の書としては重要なことではない。
同友会の企図は多とすべきであるが、大小を問わず不祥事が相次ぐわが国でどのくらいの企業、役所、組織がこのような高邁な「同友会教」の信者となれるか、が問題である。
同友会は、布教を止めてはならない。
(K.Y)
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