コラプション・ファイターのための新刊書案内

「ホージンのススメ」

「特殊法人職員の優雅で怠惰な生活日誌」

若林アキ著  朝日新聞社刊 2003年4月

 

 著者は、この本を10年に一回のお勧め本という。10年前厚生省の役人であった宮本政於氏の「お役所の掟」に続く我が国では稀有な役所の内部暴露本だからだそうである。

事実、我が国では「言上げ」を好まない文化と封建遺制である村社会構造のため、優雅で怠惰な役人天国から内部情報を出すのは狂気の沙汰であった。

一部の(タブロイド系の)メディアか、猪瀬直樹氏のような評論家が暴く、あくまでも外部からの告発に留まってきた。

10年前の宮本氏の告発本は読む人々に官僚腐敗のすさまじさを感じさせたが、同時に誰もが予想したとおり、組織の排除論理によって退職させられ、その後あっけなく逝去された。

当時は、経済危機にも程遠く、役人の腐敗は一般の人々には遠い世界の出来事であった。

 「歴史は2度繰り返す」とヘーゲルは言い、「一度は悲劇として、そしてもう一度は茶番として」と、カール・マルクスは付け加えた。

10年を経て、我が国を政治・経済・外交の危機に追いやった役所から久しぶりに出た内部告発本は、稀代のコラムニスト吉田夏彦の名言のごとく「笑うしかない」くらいの組織腐敗を戯画化している。

 著者は、大学を卒業して数年間民間企業に勤務した後、或る特殊法人の中途採用に応募する。本人も驚いたことに、予算確保の便宜上研究員の資格に格上げされて採用され、その後の10年間に見聞した社会常識と隔絶した「ホージン」の実態を活写していく。

対象となった特殊法人の名前を出さず、ホージンとしているのは、特殊日本的官僚組織の普遍性を示して絶妙である。

 「健全な肉体には健全な魂が宿る」という今や死語となった言葉も、裏返してみるとその真実がよく分かる。腐敗した組織は、魂を腐敗させていくのである。その中で、秘書として採用された若い女性が「いい若いモンが勤めるところではないです」といって、決然と退職していく姿には救いがある。

 本書の末尾では、内部告発を決断した著者に対するホージンの陰湿な嫌がらせが描かれている。個人が組織と闘うには市民社会の強力な支援が欠かせない。

 

                               K.Y)

 

Copyright (C) 2003 トランスペアレンシー・ジャパン設立準備会
最終更新日 : 2003/12/25