問題はグローバル化ではないのだよ、愚か者コラプション・ファイターのための新刊書案内

「問題はグローバル化ではないのだよ、愚か者」

「人類が直面する20の問題

J.F.リシャ−ル著 吉田利子訳 草思社刊 2003年5月

 いささか品性を欠く表題であるが、原題は「ハイヌーン」である。

著者は現代の世界が抱える問題は、徐々に人類を蝕み、かの名作「真昼の決闘」のように、地球時間の正午に向けて緊張が高まっていると主張する。

著者は又、「グローバル化」という言葉は混乱を生み、地球が抱えている焦眉の問題の解決が見えなくなっている、とも言う。

コラプション・ファイターは、腐敗・汚職が時間・空間を問わず、遍在していることを知っている。又、腐敗・汚職が歴史的・社会的淵源を持っているために、その闘いの困難さも知っている。

一方で、腐敗・汚職だけがこの世の悪なのではなく、この世界の問題がかくも多岐にわたり、錯綜していることも知らなければならない。

その意味で本書は、コラプション・ファイターの立つべき位置を客観的に再確認させる鳥瞰図を与えてくれるものである。

 著者はまず、21世紀に避けがたい2つの潮流を指摘する。人口爆発と「グローバル・ニュー・エコノミー」である。この二つが従来のシステムを揺さぶっている3つの現実を指摘する。  

それらは、

1.階層組織からネットワークへ:インターネットの到来で、階層組織の時代は終わったのである。

2.国民国家が存立の危機に瀕している:国家内部の規制以上にグローバルな規制が必要な分野が増えている。にもかかわらず、社会は1年が7年に相当する「犬の時間」で動いているのに、規制側は7年が1年に相当する「役人の時間」で動いている。

3.政府・産業界・市民社会の分立からパートナーシップへ:これまでは分立していた3者が協働へと向かわざるを得なくなる、と言う現実である。

 この認識の上で、著者は今後20年間にグローバルな解決を迫られている20の問題があると指摘する。尤も、20というのは便宜的なものに過ぎないといっている。問題の数はもっと多いかもしれないが、実務家としては網羅することに意味を見出してはいない。

現役の世界銀行副総裁として、現実を踏まえた問題点の指摘は鋭いが、著者の優れているところは、圧倒されるような困難な状況を理解しながら、実際的な解決策を提示しているところにある。

すなわち、誰が問題解決に当たるのか?

従来の組織や取り組みが機能せず、国際的組織や世界政府といったものも現実的ではない。

経済はネットワーク型に変化してしまっている、それを解決するにはネットワーク型の統治機構が必要である、という。

その当事者は、政府・企業・市民社会であり、その成功には想像力と考え方の転換が必須であり、それを可能にするのはインターネットを駆使した情報公開である、と著者は強く主張するのである。

もちろん著者は、過激だとか、ナイーブ過ぎると言う多方面からの批判を覚悟しており、むしろナイーブなのは、「これまでどおりの方式を踏襲すれば何とかなると言う考え方のほうではないか」「それではなんとかならないのだから」と小気味よい反論をしている。

 尚、著者はTIの格付け活動にも言及しているので、TI関係者としては謝意を表したい。

 

 

                    (K.Y)

  2003.06.16

 

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最終更新日 : 2003/12/25